ルーマニア



ブカレスト

ブルガリア・ルセより、朝5時30分の電車で、ルーマニアに向かう。
ルーマニアは、高校生の頃から行ってみたかった国。 神秘的な響きのある国。 いったいどんな国なんだろう?

旅行者が、ある国に入る時、その国の情報は、事前にある程度は、知っている物だ。 何故なら、色々な国をへて段々とその国に近付いていく。 それと同時に、その国の情報が、すでにその国に行って来た旅行者から入って来ると言う訳だ。なので、ルーマニアの情報もある程度は、入っている。 高校生の頃は、ただ、単純に行ってみたい国だった。でも今、ルーマニア目前のオイラとしては、出来ればスルーしたい国だ。  理由は、治安の悪さに加え役人も腐っているらしい。 これは、手に負えないパターンだ。 詐欺師なんかだったら、まだ気をつければいいだけだけど役人では、そうはいかない。
例えば、警察官が腐っているロシアの場合: 日本人が歩いていると、警察官から呼び止められる。「パスポートを見せろ!」 パスポートを見せると、「このビザは、おかしい!」 と始まる。 そして、「警察に行きたくなければ、$50よこせ」となる。 で、この$50を渡さなければ本当に警察に連れて行かれる。 ヨーロッパ旅行中にシベリア鉄道横断組みに何人もあったが中には、連行された勇者もいたので奴らは、脅しでは、ない。マジだ。

で、ルーマニアの場合には、国境の役人が腐っている。 本当は、ビザ代なんていらないのに、ビザ代を請求される。当然ビザ代なんていらない事を知っている者は、拒むが、「なら、ここで列車を降りて引き返せ」となる。 
自分は、バルカンレールパスと言う1等車に乗れるチケットを持っていたんだけど、あえて2等車に乗る事にした。 1等は、客も少ないし、外国人が多い。 これでは、カモられてしまう。 逆に、2等車は、地元民で大混雑! 乗り慣れている連中だから、ルールは知っているはずなので、理不尽な事を言われたら加勢してくれるかもしれない。

座席は、ほぼ満員状態。 一人の若者が「席空いてるよ」と呼び止めてくれた。 オイラが座り、8人掛けのコンパートメントが埋まった。
なにを話しているのかは分からないけど、中に一人威勢のいいお嬢さんがいて、ムードメーカーになっている。

2等車に乗ったおかげだろうか?ボーダー(国境)をあっさりと超えることが出来た。
少しして、威勢のいい嬢ちゃんが大きなバックから二枚のシートを取り出してから、向かい合った8人掛けの片側(4人がけ用の座席)の人間を立たせた。オイラの側だったのでオイラも立つ羽目に・・・。 いったいこれから何が始まるんだろう?? そして、座席のクッション(人が腰掛ける部分)をガツンと外すと中が空洞になっていて、その中に、取り出した二枚のシートを敷き座席の下の空洞に嬢ちゃんが入った。その上に座席のクッションを乗せて出来上がり。
立ち上がっていた者達がその座席に腰を下ろす。 始め、自分は、足を伸ばして寝たいから座席の下にもぐったのかなと思っていた。 でもそんな可愛らしい理由では、ない。
約10分後に車掌が乗車券の確認の為にコンパートメントに入ってきた。
こう言う事だったんだ。すごい!慣れすぎている。 彼女は、車掌がチケットの確認に来るタイミングをちゃんと知っていたんだ。 これで、無賃乗車成功! ゲンキンな事に、車掌が行ってしまうとすぐに座席の下から出てきた。 ナイスな嬢ちゃんだ。 その後は、自分も彼女をかくまったせいだろうか?そのコンパートメントに妙な連帯感のようなものが生まれて、自分もそれに混ぜてもらった。 言葉はその嬢ちゃんの話す片言の英語しか分からないのだけどそれで十分だ。「上を向いて歩こう」を歌ってやった。 この旅ではお決まりの曲。 もー何回歌ったのだろう? この先も日本の歌を歌ってと頼まれれば、この曲を歌っていた。


ルーマニアの首都・ブカレスト到着。 すごく気持のいい奴らだったのでもっと電車に乗っていたかった。

ブカレストの来たら偽警官に注意しなければいけない。 偽警官とは、観光客に、「そこで偽札つかっただろう!財布見せてみろ」と言い、紙幣を確認しているフリをしてその中から、何枚か抜き取ると言う物。 ブカレストの駅周辺では、石を投げれば偽警官に当ると言う位偽警官が多いらしい。
駅の掲示板で、ブカレストの後に行く町・シナイア行きの電車の時間を調べている時奴等に会ってしまった。 2人組みの若者で、日本で言う「白タク」だ。安い宿を案内する代わりに、そこまでのタクシー代をいただくと言う物。駅前の安ホテルにしようと思っていたんだけど、さらに安い宿を紹介すると言って来た。 電車で良い奴らに会って、ちょっと気が緩んでいたんだ。 こいつ等も良い奴に決まっていると決め付けていたのかもしれない。 ルーマニアは、治安悪いと知っているにもかかわらず・・・。
金を下ろしていなかったので、途中銀行に寄ってもらった。銀行でT/Cを現金に換えようと思っていたんだけど、「それでは、コミッションに10%も取られる。 ATMにしろ」と言われ、銀行での換金を避けさせた。 20$=6,000,000レイだと言われ6,000,000レイATMで下ろした。 宿に着き、タクシー代$5請求された。ちょっと高いとは思ったが、宿が安いのでそのくらいはしょうがない・・・のか?
宿に入り、前払いだったので宿代を払った。 その時に、自分は、宿に請求されたドル分の10倍の額のルーマニア紙幣を出していたらしい。確かにタクシーの中では、このレートだったんだ。 スタッフに多すぎると言われ、返された。払ったのは、自分が最初に出した10分の一。 つまり自分は、タクシーに$5では無く$50払ったって事。 最初白タク2人組に20$=6,000,000レイだと言われATMから下ろしが、実は、20$=600,000レイで一桁ごまかされていた。 だから銀行で、T/Cを換金させたくなかったんだ。 ドル建てのT/Cなら、$20換金して、600,000レイと分かってしまうから・・・。久しぶりに詐欺られた!  インフレ詐欺と命名。 自分のミスだけどムカついてしょうがない。 しかもここどこだ? ガイドブックに載っている地図の範囲外。 ちょっと遠くに来過ぎてしまった。  
ムカつきはしたけど、ここは、憧れのルーマニア。 ルーマニア料理食べなくちゃ・・と思い町をぶらついた。 といってもここは、住宅地って言う方があってる。青空レストランみたいな所に入ってみた。 レストランの敷地の庭で食事をするという物。 結構ボリュームがあったけど美味しかった。
 
帰り道、細い路地に入ると、そこは野犬の群れが幅を利かせいる別世界。 変な所に入ってきちゃったな。 ルーマニアの野犬情報は、旅行者の間では、有名な話。ズボンを食いちぎられた奴にも会った事がある。 地元の子供もそこにいたんだ。 でも奴らは、オイラに向かってくる。唸りながら今にも噛まれそう。 こういう時は睨みを利かせる他いい手をしらない。 こっちはお前らなんかにビビッてはいないぞ、お前らより強いんだから・・・と思わせなければいけない。なおも唸る事を止めないが、オイラと1mの距離だけは、保っている。 睨み作戦成功だ。 ここからも更に重要。 ゆっくり、本当にゆっくり視線をずらし、ゆっくり歩きはじめる。 間違っても走ってはいけない。 歩き出すと、それまで保っていた距離が縮まる。 一匹の牙が空を切ったように思えた。 立ち止まりまた奴らに向き直る。 メチャクチャなガンを奴らに飛ばす。もちろんガンだけでは無くファイティングポーズも一応取っては、いる。 また、自分と野犬達の間に距離が生まれる。 その繰り返しでやっと路地を脱出。 助かったーーー!野犬たちはその路地を出る事は、なかった。 後で聞いた話だけど、 野犬遭ったら石を投げるのが効果的らしい。 



シナイア


ここシナイアには、2つの城がある。今日は、そこに行く事にした。城付近では、ちょっとした出店があり、トウモロコシや、コハクを売っていた。 どうやらルーマニアは、琥珀が有名らしい。 
城の中は、薄暗く重い感じが漂っている。10人位のグループになりガイドと一緒に行動する事になった。でもルーマニア語なので何を言っているのか分からない。グループのだれも写真を撮ってはいない。 写真撮っちゃいけないのかな? ガイドに写真の件を聞いてみた。

すると何やら、ものものしい雰囲気になってきた。 ガイドが無線を取り合い何やら、やり取りをしている。 自分は、何かいけない事を聞いてしまったんだろうか・・・?
自分がいたグループは、既に先に行かせてしまっているし、広い部屋に一人残されその横では、おばちゃん(警備員)が無線でバンバン何かを飛ばしている。 いったい何が始まるんだろう?と思っていると、その部屋にいた観光グループを全て外に追い出し、また別のグループもその部屋には入れないようにガイド達に無線を飛ばした様だ。 で、「早く撮りなさい」 と言われ、ちょっとあっけに取られた。 オイラに写真を撮らせるためだけに全員部屋の外に追い出したのか・・・。 取り終わると、また別の部屋に行き、その部屋も全員追い出して、写真を撮らせてくれる。 どうやら写真撮影は、禁止の様だ。 だから他の人間に見られないように全員部屋から追い出してから、写真を撮らせるんだ。 でも最後に$2請求された。 まーもっと前の時点でワイロを請求されるなとは、分かっていたけどね。 もちろん快く払ったさ。 これだけの事をしてもらったんだからね。 でもルーマニアってちょっと笑っちゃうよね。 もしかしたら、大概の事はワイロで何とかなるのかもしれない・・・なんて思ってしまった。 だって城の警備員が全部グルになってるわけだからね。






シギショアラ


ここは、大きな町だけど、これと言って見るところが無い。 なので一泊のみ。
次の日の朝、クルージナポカへ向かうために電車を待っていると、10才位の兄妹ジプシーが寄ってきた。妹の方は、小雨が降っていた為、ビニール袋を頭にかぶっている。
「お金ちょーだい。このパン少しあげるから。」 このパンと言うのは、見るからに硬そうなパンの切れ端だ。それを二人で分け合っている。 そんな物もらえる訳が無い。 

普段自分は、物乞いには金はやらない。 別にポリシーがある訳ではないけど、キリが無いからだ。 金をせびってきた奴全てにあげていたらこっちがその内逆の立場になりかねない。 そうすると、今日は気分がいいからあげるが、明日は、あげない。 もしくは、コイツには、あげてコイツにはやらない。みたいに自分が人を区別しなければいけなくなってくる。なんか一段上の目線で見ているって言うか、施しを与えてるって言うか・・・とにかく上手くは説明できないけどいやなんだ。 もしかしたらあげなかった方の人間の方が数倍困っているかもしれない。 また気が乗らない時にあげなかった人間の方が困っているかもしれない。 そんな事自分には判るはずも無い。 だから金は一切あげない。 自分は、ただのバックパッカーだ。 偉くもなんとも無いただのバカ者だ。 オイラにこびるな!!

話を戻すと、硬いパンを分け合う二人を見て、金をあげなくちゃって言う情が湧いてきた。 小銭をあげようとすると、横からおばあさんが寄って来て、二人を怒っているようだ。 その後、その二人が戻ってきて、やはり金は要らないと言う。

これ以上ここにいては、間が持たないので駅の待合室からプラットホームへ移動する事にした。
何故か、二人もついてくる。 この二人と離れる為に移動したのに、意味が無い。 地下通路を通っていて誰もいなくなるとまた、「お金ちょうだい」と言ってきた。 「No!さっき要らないと言ったじゃないか!」 と断ると、女の子が「お願い、お願い」と甘える。 めちゃくちゃ可愛い。 1100レイ(5円)あげたさ。 
ホームに着き、ベンチに座ると、彼らも隣に腰を下ろした。 まだ金が欲しいようだ。「お願い、お腹空いてるの。 両親はいないわ。」 「1100レイじゃパンも買えないよー。」  確かにその通りだ。本当はもっとあげたかったが、良くないと思い、断った。  「ちょっとこれを見ろ!」と言ってオイラのカーゴパンツの膝の所を指で指した。 (このカーゴパンツは、ニュージーランドで、バイクで事故った時にはいていた物で膝の所に穴が開いている。) 「オレは、こんなに貧乏なんだ。 お前らのジーパンには、穴が開いていないじゃないか!」 と言ってやった。 なんか妙に彼らが納得してくれて、その後は一切金をせびる様な事はしなかった。 
この辺りから、だんだん楽しくなってきた。 「地球の歩き方」に載っているルーマニア語を使って、挨拶したり名前聞いたり、ガイドブックに載っている、シギショアラの写真も見せてやったらすごく喜んでいた。 もちろん、お決まりの「上を向いて歩こう」も歌ってやった。 
そうこうしていると、近くに座っていた若い女性が、オイラに2,500レイ(10円)を渡そうとする。 「このお金は何?」 と彼女にたずねると、恥ずかしそうな顔をして、 ジプシーの兄妹に「冗談は、よしてよ」(多分こう言っている・・・と思う) と言い自分の席に戻っていった。  どうやら、ジプシーの兄妹が「この人が私達のパパになるんだ」と言ったらしい。 それを聞いた女性がカンパのつもりでお金を渡した様だ。 すごく優しい女性のようだ。 
せっかく盛り上がっている時に、待合室で二人を怒っていたおばあさんが現れた。  ちょっとビックリしたんだけど、妹の方が強い口調でおばあさんにくってかかる。「ただ英語でお話していただけよ」 「彼は、日本人よ」  なんとか理解できたのは、この二つの言葉だけ。 ルーマニア語だからね。 その後二人は、行ってしまった。 でも久しぶりに楽しい一時だった。 




クルージナポカ



クルージナポカは、大きな町だけど、あまり観光するような所は、無い。 でも宿の女性は、英語は判らないけど一生懸命理解しようとしてくれる。 宿は、広くとても賑やか。 夜ビールを飲みながら、映画「テルマ&ルイーズ」を見た。 

この町がルーマニア最後の町だ。 ルーマニアを出るのはちょっと寂しい気がする。 
ルーマニアの出だしは最悪だった。久しぶりにカモられた訳だからね。 でも色んな事が起こり、それと同時にルーマニアをどんどん好きになって行き、また来たい国の一つになっていた。